監修医師:いなばクリニック院長 稲葉 岳也医師
資格:医学博士 日本耳鼻咽喉科学会専門医 日本アレルギー学会専門医 日本レーザー医学会認定医
赤ら顔は、顔が真っ赤になるため非常に目立ちやすく、症状を抱える人の中には、気になって人と顔を合わせたくないと悩んでいる人も多くいます。一方で、体質だと諦めて何も対策をしていないという人もいるのではないでしょうか。実は赤ら顔は単なる体質ではなく、病気の症状のひとつとして現れる可能性もあるのです。病気が関わっている場合は正しい治療が必要となります。今回は、赤ら顔が症状として現れる病気について詳しく紹介します。
身体の病気による赤ら顔について
赤ら顔とは文字通り顔が赤くなる症状のことです。赤ら顔には大きく2つのタイプがあり、ひとつは身体の病気からくるもの、もうひとつが肌の特徴によって起こるものです。ここでは、身体の病気による赤ら顔について解説します。
糖尿病
糖尿病は糖の代謝異常によって起こる病気です。糖尿病は主に、子どもや若年者に多くみられる1型糖尿病、インスリンの分泌が少なくなって起こる2型糖尿病の2種類があります。特に2型糖尿病の割合が大多数を占めています。糖尿病の代表的な自覚症状には、尿の量が多くなる、喉が渇く、体重が減る、疲れやすくなるなどですが、その中の1つに赤ら顔があります。高血糖によって抹消の細い血管がダメージを受けることによって、手の平や足の裏、顔などが赤くなります。
高血圧
高血圧は血圧の高い状態が続く病気です。最大血圧か最小血圧のどちらかが常に標準値より上回っている状態が高血圧となります。(最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上)高血圧には重症化するまでほとんど自覚症状がありませんが、血管に負担がかかるため、血管の老化が進みます。また、心臓から血液が大量に押し出されるため頭に血がのぼった状態になり、顔がほてって赤ら顔の症状となって現れることがあります。顔がほてるように熱く感じ、赤くなる場合は高血圧を疑ってみましょう。
膠原病(こうげんびょう)
膠原病は女性に多くみられる病気で、全身の血管や皮膚、関節、筋肉などに炎症が起こる病気の総称です。原因不明の病気として難病指定されているものも多いですが、近年の研究によって遺伝的な要因やさまざまな環境要因によって発病することが少しずつ分かってきました。複数の病気の総称であるため病気によって症状は異なりますが、肌が敏感になり、紫外線を浴びることで赤ら顔の症状が出ることがあります。発熱や筋肉、関節の痛みを伴う場合は膠原病の可能性も考えましょう。
多血症
多血症は赤血球増多症とも呼ばれており、血液球のヘモグロビンや赤血球が異常に多くなる病気です。骨髄の造血細胞が異常増殖して起こる真性多血症と、ホルモンの分泌異常などによる二次性多血症があります。血液がドロドロになることで高血圧になり、赤ら顔を発症します。倦怠感や頭痛、めまいが伴うときは多血症を疑いましょう。多血症は発症しても症状に現れないこともありますが、定期的な血液検査で発見されることの多い病気です。
肝硬変
肝硬変はウイルス感染やアルコール、自己免疫肝炎などの原因で肝臓が傷つき、肝臓全体がゴツゴツと固くなって肝臓機能が低下する病気です。肝硬変の症状の1つにクモ状血管拡張と呼ばれるものがあり、首や前胸部、頬に赤い斑点が出ます。赤く小さな隆起の周りにクモの足のように赤い毛細血管が広がる非常に特徴的な症状なので、クモ状血管拡張がみられた場合はすぐに肝硬変を疑いましょう。この他にも手のひらが部分的に赤くなり、赤紫色の斑点ができる手掌紅斑(しゅしょうこうはん)と呼ばれる症状も多く見られます。おかしいと思ったらすぐに受診することが大切です。
カルチノイド症候群
カルチノイド症候群とは、良性、又は悪性の腫瘍によってホルモン様の物質が過剰に分泌され、ホルモンの作用によってさまざまな症状が体に起こる病気です。頭頚部にでる紅潮が最も典型的な症状と言われており、カルチノイド症候群で最初に現れる症状でもあります。この他にも、血管の拡張によっても紅潮が起こり、食事や熱い飲み物を取った後、感情の変化によって紅潮赤ら顔になります。赤ら顔になった後、チアノーゼを起こして肌が青ざめることもあるので、注意して観察しましょう。
肌の病気による赤ら顔について
身体の病気による赤ら顔の特徴に当てはまらない場合は、身体の病気以外が原因で赤ら顔になっている可能性があります。この場合は、肌の病気が原因のものと肌の特徴によるものに分けられます。
酒さ
酒さは慢性的な皮膚疾患のひとつで、白人に多い疾患としても知られています。主な症状は額、頬、顎、鼻などに生じる赤みでこれによって赤ら顔にみえますが、大きく分けて4つのタイプがあります。紅斑毛細血管拡張型といわれる血管が浮き出てみえるタイプ、丘疹膿胞型といわれるニキビのような吹き出物を伴うタイプ、鼻瘤型といわれる皮膚が厚くなってでこぼこになるタイプ、眼型と呼ばれる目の赤みやかゆみ、まぶたの腫れなどを伴うタイプです。遺伝による要因と環境による要因とが半々と言われていますが、症状を抑えるためには早めの対処が肝心となります。
毛細血管拡張症
毛細血管拡張症とは、さまざまな要因によって毛細血管が拡張し、血液が過剰に滞ることで皮膚の表面に透けてみえる状態のことです。顔の血管は数が多い上に表皮も薄いため、ほてりやすく赤さが目立つ部位となります。人前に出て緊張したときや怒って興奮したときなどの感情の変化に加え、寒い外から暖かい室内に入ったときの気温の変化など、ちょっとした刺激で人一倍赤くなることがあります。治療には血行代謝の改善が有効です。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症を伴う疾患で、乳幼児に発症することも多い病気ですが、大人になってからアトピー性皮膚炎を発症する人も増えてきました。乾燥によって起こる赤みのほか、重症化して腫れを伴う赤みが起こることもあります。アトピーの炎症は顔や首、胸、背中など上半身に起こることが多く、激しいかゆみを伴います。かきむしりなどによって肌バリアが低下するとますます赤ら顔が悪化するため、症状に合わせた適切な治療と対策が必要です。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは頭皮のフケが多くなったり頭皮にこびりついたりする皮膚の病気のひとつです。症状は顔にも現れ、脂っぽい細かい皮がこびりついて赤くなり、赤ら顔の症状になります。皮膚がぼろぼろとむけてくる割にかゆみは少なく、放置しておくと症状が悪化します。慢性化して自然治癒が困難な病気のため、初期症状である頭皮のフケが気になった時点で皮膚科を受診することが大切です。原因は確定されていませんが、遺伝的要因、環境的要因、ストレスなどが絡み合って発症すると考えられています。また、皮脂を栄養とするマラセチアというカビも原因の1つと考えられています。
自分の赤ら顔はどのタイプ?チェックリストで確認しよう!
赤ら顔の治療のためには、自分の赤ら顔がどのタイプなのかを知っておく必要があります。症状別のチェックリストでチェックしてみましょう。
身体や肌の病気によるもの
糖尿病:顔以外にも手の平きや足の裏、手足の指に赤みが現れる。
高血圧:顔がほてるように熱くなる。のぼせる。
多血症:頭痛やめまい、のぼせた状態やほてり感がある。
肝硬変:クモ状血管腫という赤い小さな隆起のまわりにクモの足のように赤い毛細血管が広がる。
カルチノイド症候群:皮膚の紅潮のほか下痢、むくみ、ぜんそくのような症状が伴う。
膠原病:紫外線などで症状が出る。発熱、関節の痛み、しびれなどの症状がある。
脂漏性皮膚炎:皮脂が多い場所にカサカサした赤みがある。ニキビのような湿疹がある。
酒さ:肌が脂っぽく、赤みの部分にはほてりやかゆみがある。
毛細血管拡張症:細かい血管がクモの巣状に浮き出ている。
アトピー性皮膚炎:アレルギー体質。目のまわりや口のまわりに症状が出やすい。
そのほか肌の症状によるもの
赤面症:人前に出ると緊張して赤くなる。
ホットフラッシュ:更年期障害の症状があり、ほてりや汗、動悸を伴う。
敏感肌:肌が薄く乾燥して粉をふく。化粧品などでかぶれやすい。
ニキビ・ニキビ跡:慢性的にニキビを繰り返している。触ると痛い。
菲薄化(ひはくか):肌が薄く、毛細血管が透けてみえる。
病気が疑われる赤ら顔の対処法
病気が疑われる赤ら顔の対処方法や予防方法は、原因によって変わってきます。そのため、まずは原因を特定することが大切です。どんなときに赤ら顔が起きるのか、肌の様子は乾燥しているのか脂ぎっているのかなど、チェックリストを参考にして調べてみましょう。特に痛みやかゆみを伴う場合、時間がたつにつれて症状が悪化する場合は注意が必要です。いくつかの特徴的な症状が自分の症状に当てはまると思った場合、専門医の診察を受けることが大切です。
症状が長引く場合は病院へ行くことも検討しよう
赤ら顔は、原因によって症状が異なります。体質的なもので治療の必要のないものから、すぐに病院に行って治療を受けなければならないものまであるので見極めが大切です。医療機関を受診する1つの目安として、赤ら顔の他にも気になる症状がないか、症状が改善せず長引いていないかなどをチェックしてみましょう。
赤ら顔が症状にある病気は意外と多い
赤ら顔が症状としてある病気は意外とたくさんあります。中には放っておくと悪化する病気もあるので注意が必要です。単なる肌の症状と自己判断しないで、少しでも不安を感じる場合は医療機関を受診することをおすすめします。
いなばクリニック院長 稲葉 岳也医師
資格:医学博士 日本耳鼻咽喉科学会専門医 日本アレルギー学会専門医 日本レーザー医学会認定医
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東京慈恵会医科大学卒業後、2004年に、いなばクリニックを開業。
耳鼻咽喉科、皮膚科、美容皮膚科、美容外科、形成外科、内科、アレルギー科を主体とした総合アンチエイジングクリニックです。
レーザー治療、アンチエイジング治療の専門であることから、最新のレーザー機器を導入し、最先端医療を担った治療を行っております。
また、かかりつけ医として、地域への密着を目指したクリニックです。